初夏の便り:青葉と、街の風の話

5月の半ばを過ぎると、東京の街路樹が一気に色を深めます。冬の終わりの黄緑から、すこし重い緑へ。並木の下を歩くと、葉と葉の隙間から落ちる光が、足元で揺れています。

この時期の朝は、まだ少しひんやりしています。郵便局へ向かう道で、シャツの上に薄手の上着を一枚羽織って出ると、ちょうどいい温度です。出るときに迷う気温の幅が、いちばん狭くなる季節かもしれません。

朝顔やひまわりの名前を呼ぶには、まだ早い時期です。代わりに、紫陽花のつぼみがすこし色を含み始めて、青に向かうのか紫に向かうのか、土の様子を探っているようにも見えます。

街の店先には、麦茶のパックや、薄手の浴衣の生地が並び始めました。スーパーの果物のコーナーには、メロンやびわ。コンビニの新商品にも、レモンや梅の風味が増えてきます。

私たちが商品を受け取りに行く街の郵便局は、この季節になると入口の脇に小さなプランターが出ます。誰が世話をしているのかは知らないのですが、毎年この時期にはマリーゴールドが咲いて、季節を知らせてくれます。

5月の風には、冬の風とも夏の風とも違う、特有のさらりとした感触があります。湿りすぎず、乾きすぎず。お洗濯ものを干すには、いちばん気持ちのいい時期です。

海外で暮らしておられる方には、この季節の日本の景色を、おそらく懐かしく思い出される方も多いのではないかと思います。新緑、爽やかな空気、初夏の祭り。それぞれの土地で違う形をしていても、共通する季節の手触りはあるはずです。

ふと立ち止まった瞬間に、葉が揺れる音だけが聞こえる。そんな時間が、初夏には何度かやってきます。お便りの代わりに、こちらから写真をお送りすることは難しいけれど、もし日本のものを受け取られたとき、その箱の中に少しでも初夏の気配を感じていただけたら、と思いながら作業をしています。