梅雨の便り:東京の湿度と、暮らしの工夫

6月の半ばを過ぎると、東京には梅雨が訪れます。空が白っぽくぼんやりして、午後になると小さな雨粒が落ちてきます。傘を持つほどではないけれど、肩や髪がしっとりと濡れていく、そんな雨が一日のうちに何度か繰り返されます。

紫陽花の青が、街のあちこちで濃くなってきます。先月までつぼみだったものが、土の色を吸い込んで、青になったり紫になったりと、それぞれ違う表情を見せます。通りにある美容室や公園の片隅に咲いている紫陽花を、雨上がりに眺めるのが、毎年この季節の小さな楽しみです。

家のなかでは、湿度が一気に上がります。畳に手を当てると、すこし湿った冷たさが感じられて、ああ、梅雨だと分かります。押し入れや靴箱に除湿剤を仕込むのも、ちょうどこの時期。新しいパッケージの除湿剤を買い揃えるのが、なんとなく季節の儀式のようになっています。

お世話になっている街の郵便局では、入口に大きな傘立てが出てきます。色とりどりの傘の柄が並んでいるのを見ると、それぞれの持ち主の今日の予定を、ふと想像してしまうことがあります。透明なビニール傘がいちばん多いけれど、その合間に、しっかりした作りの紺色やベージュの傘が混じっていて、季節を感じます。

梅雨どきの東京は、足元が濡れて歩きにくい一方で、空気だけはしっとりとして、肌に優しい時期でもあります。乾燥で唇がひび割れることもなく、洗濯物は乾きにくいけれど、生活のリズムが少しゆっくりになる感じがします。

海外には、雨季と乾季がはっきり分かれる地域もあれば、年間を通して湿度の低い地域もあります。梅雨という、明確な季節の境目を持つ感覚は、日本ならではのものかもしれません。雨が続くことを否定的に語ることもありますが、雨もまた、日本の風景の一部だと思っています。

紫陽花の色が変わっていくのを見ながら、いまもどこかの工房や店先で、夏に向けたものが用意されていることを思います。涼しい素材のシャツ、麻のハンカチ、水羊羹のような夏のお菓子。雨が降る音を背景に、それらの準備が静かに進んでいくのが、6月の東京です。